Music Studio - Kaz22
 楽器・機材の紹介


Music Workstation

AKAI MPC Key 37


2025.10.27
正確には AKAI Professsional MPC Key 37。



60半ばの私にとって、アカイというとオープンリールやカセットのテープデッキの代表的なメーカーだった赤井電機のイメージが強い。アカイの高性能なオーディオ製品はそれなりの値段がする垂涎の的だった。

1980年代半ばから AKAI Professional のブランドで電子楽器を手掛け、特にサンプラーの開発に力を入れていたように覚えている。しかし、当時のサンプラーは何十万円もする機材で、アマチュアが興味本位で手に入れられるようなものでは無かった。(サンプリングする音源自体が身の回りに然程存在するわけでもないこともあり。)

より年代が進むとサンプリング技術の延長線上でパッド型音源/コントローラーを得意とするメーカーというイメージに変わり、また、ウィンドコントローラーというニッチな製品を出している点で注目はしているものの、はっきり言って自分にはあまり縁がないブランドだなー、と言う感じだった。

それがここに来てAKAIの製品を手にすることになったのは奇遇である。

きっかけは MIDIキーボード(Arturia Keystep 37)が壊れてしまったことにある。ある日突然、3オクターブある中の真ん中のBのキーの反応が鈍くなり、とても普通に使える状態では無くなった。これがまだ左側のオクターブのBならだましだまし使えなくも無かったのだが。

尤も、正直なところ、暫く前からこうなることを予測して代りとなる手頃なキーボードを探してはいた。

Keystep 37と同じくコントローラーとしてのMIDIキーボードだと安価で済むけど、折角ならこの機に Alesis micron も手放して、その代りとなるシンセにしようかなと思案に暮れたが、中々、自分の条件に合う製品が市場に出回っていない。

絶対条件は、作業デスクの上に置いて、音楽制作以外の作業をする時にも邪魔にならずに使えるサイズであること。理想的には49キーが欲しかったが、フルキーサイズだと横幅が結構広くなってしまうため37キーで妥協。キーサイズはフルかミニかどちからと言えばフルサイズ。Keystep 37がミニサイズなので、タッチが良ければそれでも問題ないのだが、MIDI コントローラーであろうとシンセであろうと最近の傾向では、ミニサイズになるとピッチベンダーとモジュレーションホイールが物理的なホイールではなく、磁気ストリップになってしまう。これはちょっと使い辛いので、できればホイール式の物がほしい。

シンセでは Modal Electronics の Cobalt に惹かれたが、メーカーが将来的に存続するかどうかやや不安。ASM の HydraSynth Explorer はミニサイズ鍵盤で磁気ストリップのところ値段が10万円程。Novation の Mini Nova はミニサイズだけど物理ホイール式で値段もそこまで高くない。でも、シンセとしての操作性が自分の好みに今一合わない感じ。 後、Korg からスリムサイズ37キーのシンセが沢山出ていて、中でも multi/poly や Opsix は魅力的だけど奥行きが少しでかい。それと今時の製品、その多くがアフタータッチを備えていない。
 
一方、MIDIコントローラーを見るとフルサイズ37キーで興味を持てるのは Novation LauchKey 37 程度。値段も3万円位のお手頃価格なので、これでいいかと思ったのだが、アフタータッチが無い。それ程この機能を使うわけでない(と言うか打ち込み時はわざわざOFFにしてたりする)のだけど、今までずっとアフタータッチがついているキーボードを使ってきたので無いと寂しい。因みに、49キーがデスクに置けるのであれば Korg Keystage 49でほぼ確定だった。

このように色々と迷っているうちに辿り着いたのがこの AKAI MPC Key 37。MPC = ビートマシンのイメージが強いので、自分の音楽制作の方向性にはマッチしない製品と思っていたのだが、フルサイズのアフタータッチ付きキーボードとしっかりしたピッチベンドとモジュレーション・ホイールがついていて、MIDIキーボードとしては最適。キータッチも申し分なく良い。新品価格はそれなりにするので、中古品を購入して導入コストを抑えたが、MIDIキーボードだけとして考えるとそれでも高いが、16個のパッドの反応も凄く良く、ドラムの打ち込みが大変楽になった。更に、最初は不要だと思っていた所謂MPCのビート作成機能も本体でかなり簡単にできてしまうので、曲のアイデアをスケッチしたり、ギターやベースの練習用のリズムパートが手軽に作ったりできるのは大変便利。

尚、PCに MPC Software をインストールするとPCとMPC Key 37で楽曲の制作作業を連携できるので、これも「おまけ的」に便利。おまけ的と言うのは、現在のところPC用のソフトがベータ版でしかリリースされておらず、完璧な連携と言うにはやや難があるため。この点は今後の展開に期待。

ところで、AKAIはずっと日本のメーカーだと信じていたのだが、実はそれが違うということをこの製品を購入して初めて知った。2000年に赤井電機は経営破綻して消滅してしまい、その後 AKAI Professional というブランドは存続したものの、現在に至っては米国の inMusic Brands Inc.という企業が保有している。

AKAI が信頼できるブランドであることに違いは無いと思いますが。

 

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